12年間、春と秋に行われている日本館メンバーによる勤労奉仕。その行動力から「日本館アーミー」とまでいわれています。今春の作業はデンバー郊外にある大きな公園の散策道の砂利敷きと雑草抜き。朝8時30分、小雨も晴れ上がり恒例のストレッチ。常連の顔に混じって新人も家族と一緒に。また子供クラスから大人のクラスに入ったばかりのターリヤさんとブランデン君も仲間入り。このプログラムはデンバー市の「ハンド オン デンバー」プロジェクトとして全市規模で行われているものですが、このプログラムは12年前に日本館が始めてシビックセンター公園の勤労奉仕をしたのがきっかけとなったものです。参加された皆様、リーダーのメリー パオさんご苦労さまでした。本間館長、参加した日本館シニアメンバーのMSケリーからのレポートがあります。
■雑草抜きの想い出
若い頃は元気もあり、誕生日と言うと生徒が集まってくれて朝からシャンペンを飲み、夕方にはコルクで作った首飾りが大きく2重にも首に下がってーーなんていう事をしばらくやっていたものでした。ところがある日突然、「何やってんだろう、もういいや」となってシャンペン1本2000円、コレをいくら飲んでもションベンしか産まれない、なんて考えて「それじゃ少しは何か残せる事でもしたほうが」と始ったのがこのプロジェクトの始まりでした。
徹底してやった時の突然の変化には何の未練も無く、中途半端な行為には未練が残るようです。とにかく良く身体がもったものです。ですからこのプロジェクトは何かすごい理想とか有って始めたものではないのです。まず変化の必要に気が付き行動をし、そしたら理想がついてきた、そんな感じなのです。12年間が過ぎ、今では私がいっさい助言や指示をしなくともスタッフによって手際よく作業がすすみます。12年前のシャンペンが今頃役にたってきました。
今回の作業のひとつであった「雑草抜き」、これは1〜2メートルもあるものを根こそぎ掘り返す大仕事。其のままにして置くと翌年には公園が其の雑草で覆われる程の繁殖力の強い奴で日本ではギシギシと言われるアメリカサイズ、もうひとつがなんと野生のゴボウ。ゴボウもそのままにしておけば背丈が数年後には5〜6メートルにもなるのです。1年物でしたら食べれるかもしれませんが、大きいものは大人の腕ほどあり掘るだけで大変です。参加した日本人の御婦人から「一本300円くらいはするのに」とため息。ギシギシの方は抜いて種が飛ばないよう袋に入れるのですが,コイツには苦い想い出があります。今から25年位前、河原の春采摘みと洒落込みました。聞こえは良いですが金が無かっただけの事で食料調達です。スカンポの新芽と間違えて摘んで持ち帰り、茹でて酢醤油で食べたのです。スカンポの粘りもあったのですがチョット苦かったのです。止めておけば良いのに食べてしまい数日間苦しみました。私は恨みを込めてコイツを抜き取りながらもその頃の事が楽しい想い出として浮かんできました。周囲ではそんな事など知らない門下生が一生懸命私のあだ討ちをしてくれました。
この頃、今が過去の物事と重ねて見える事が多くなりました。若い頃は前例がなく手探りだった物事がこの頃は前例に映し出して考えるようになり、何事も無しの事く振舞ってはいるが考えてみれば心の雑草、日々の雑草抜きで今まで暮らしてきました。いくら抜いても出てくる雑草、コイツとは戦いながらも一生付き合っていかなければならない様です。
このレポートはデンバーレスキューミッション(ホームレス保護更生施設)で書いています。今日は6月度の食事提供の日です。5時からの更生プログラムのレジデント60名ほどの夕食を終えまもなく外で待つ300人ほどの人々(ここではゲストつまりお客様と呼びます)の夕食です。日本館の常連が集まってきて、いつもの様に手際よくサービスをしてくれる事でしょう。最初一人でやっていた頃に比べれば嘘のようです。最近では町を歩いていると気軽に声の掛るほど彼らとも顔見知りになりました。たった今もプログラムを終了したといって私に抱きついた人がいます。ホームレスと言う実に辛い体験から這い上がった人だからこそ喜びは大きいのでしょう。その体験を活かして今度は多くの仲間達の支えとなってくれる事を願うものです。このプログラムも14年目になりました。実に多くの善良で愛国心の強いアメリカ人を中心にこのプログラムは発展し、そして日本館は支えられています。多くの方々に感謝するものです。
日本館
館長 本間 学
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