私は中学三年生の時から合気道を習いなじめ今年で8年目になりますが、アメリカへ行くまでは正直合気道の稽古をしていても何のために合気道を稽古しているのかが定かではありませんでしたし、私のしていることがすべて正しいのだと思っておりました。ですが、本間先生をはじめ、日本館の生徒の方々と稽古をして思いました。自分の考えていることが全てではない。この考えは合気道についてだけではなく、習慣、文化についてもそうです。今から書くことは私が感じたことであって全ての日本人に当てはまるとは限りませんが、私が実際に感じ、勉強になった実体験をお話します。
7月27日日から8月27日までアメリカのデンバーにある日本館という本間学先生が指導なさっている合気道の道場に内弟子としてお世話になりました。この本間先生と私の師である合気道小林道場道場長小林保雄は合気道の開祖である植芝盛平翁のもとで内弟子をなさっていた戦友でもある間柄であり、数年前に数十年ぶりに会って以来交友を深めていらっしゃるようです。その縁で稽古をまじめにしていた私は小林保雄道場長に学生最後の夏休みを利用して、日本館へ内弟子を経験してきてはどうか?というお誘いをいただき、本間先生のもとで一ヶ月間お世話になることとなりました。
もともと私も学生最後の夏休みは思いっきり思い出になるようなことがしたかったし、合気道が私にとって何なのかを確かめたかったので(余談ですが、私は白人の金髪の女性がタイプです)、お二人の好意に甘えて行かせていただきました。
デンバーへ旅立つ前に日本館でプチ内弟子のヒロさんとこまめに連絡を取り合い、あっちで必要なもの、情報をいろいろと教えていただきました。正直、メールの段階では私の想像のヒロさんはとても厳格な人だと想像しておりました。(実際は、一緒にいて頼りがいがあり、私と西井君の憩いの場所で、兄貴のような存在でした。)彼に初めて空港でお会いしたとき、彼からすごい「生」のオーラを感じました。ハキハキしていて、日本人にはなかなかいないタイプです。それとイタリア出身のミケレさんも出迎えてくれました。日本館へ向かう車中私には見たことないものばかりで、時差ボケもすっ飛んでしまいました。無料で広い高速道路、乗り捨てられた車、お金を求めるホームレスなどなど。今でもその興奮は覚えています。
日本館につくとすでに稽古が始まっていて、大きい道場に大きい人がいっぱいいて、
活気で満ち溢れていました。その中をせわしなく、動き回っていたのが内弟子生活中のルールを1から10まで教えてくれた剛さんでした。
本間先生への挨拶を済まし、稽古に出ようとする私を、先生は「見学していなさい、まだ体が慣れていないから」とおっしゃってくださいました。内弟子生活中、本間先生は私だけではなくみんなの体を気遣い、「昼寝をすると体がだるくなるぞ」「オレンジジュースを飲め」と毎日のようにおっしゃって下さいました。本間先生は0の状態からからアメリカで合気道、日本食レストランで有名になった方で、どんな困難も乗り越えてきた方です。僕らのような毎日をボーっと過ごしているような怠け者とは違います。内弟子の休日になると先生はたまに課題を課します。私はデンバーに到着して次の日ぐらいにダウンタウンにある議事堂のてっぺんまで行ってくるよう言われ、びくびくしながら街を歩き、結局議事堂の前までは行ったものの、てっぺんまでは行けなくて悔しい思いをしました。ですが違う機会に訪れることができ、なんだか自信がつきました。他には「今日は〜まで行って来い」と日本人二人とイタリア人で遠出したことを覚えています。結局それも目的を達成することはできませんでしたが・・・でもつたない英語を使うことに抵抗があまりなくなった私は、日本に帰ってからたくさんの外国人の友達を作ることができ、今をとても楽しんでおります。
本間先生のクラスの稽古はとても人気で、内弟子は稽古が始まる前や体操中は道場の端のほうにいるのですが、ギュウギュウの状態がしょっちゅうでした。何故そんなに本間先生が人気なのか、僕にはわかります。もちろん合気道の技、指導方法などはとても魅力的な先生ではありますが、先生は「気」が使えるからです。このような言い方をすると誤解されてしまいますが、人に対して、気を使える優しくて男らしい人だということです。だから私も本間先生みたいな男気のある人が好きで、一ヶ月間苦しいことはありましたが先生についていけたのだと思います。
生徒も先生のような男気のある人ばっかりで、忙しい中、本間先生の還暦パーティーに駆けつけてくれたり、指導代行を引き受けたり、内弟子の健康を気遣って大量のスポーツドリンクとバンテリンのようなものを買ってきてくれたり、内弟子を観光に連れ出してくれたり。私はアメリカを訪れる前までは、アメリカ人は我が強い人ばっかりで、強気で向き合わなければ負けてしまうと思っていたのですが、そんなことはなくて、日本館の生徒だけかもしれませんが、日本人よりも気がきく方ばかりでした。
なので、合気道日本館はHOMMAISMで溢れかえっている道場で、家族のような温かさを感じることができます。私が日本に帰ってきて日本に対して感じたことは、体の大きさの違いと、相手を思いやる心の温かさでした。今、日本人に必要なものはこれで、私は一カ月間、本間先生にこれを学んだのだと感じております。
|