2015年3月24日の正午少し前、それは驚き以外ナニモノでもなかった。「職を全うし定年を迎え明日帰国する」と在デンバー日本国総領事館総領事大野郁彦氏が訪ねてきた。東日本大震災、とくに福島原子力発電所の初動調査や防衛に命を掛けた米国の優秀かつ勇敢な軍人達を落胆させておきながら「明日帰国するのでキッチリ謝罪しておかねばーー」と幾度も頭を下げた。それはほぼ三年前に在デンバー日本国総領事館が情報漏えい等で日本のメディアに騒がれそうになった時、単身お忍びで私を訪問し「誰かに詰め腹を切ってもらうしか無い」と残して立ち去ったように、今回も単身で予告無く訪れた。
私は聞いた「なぜ、日本にとって国益となる東日本大震災支援感謝演奏会へ一言の説明もなく現れず、そして現在までその理由を語らないのですか?」すると大野氏は答えた「米国防省から総領事が出席すると事が大きくなるので出ないで欲しいと電話があったので」と。私は即座に否定した。ワシントンの日本大使館からと云うならこの嘘もばれなかったが、米国防省が彼に直接電話してきたなど思い上がりの言い訳である。米国はそんなに暇ではない。「軍出席者の官位が自分より低い」と軍関係者が驚く要求をしたのは大野氏であった。三年あまり過ぎて、過去の事は役職としての自分が犯したこと、退官後は一市民なのでお許し下さいと謝罪に現れる情けない姿に呆れるしかなかった。問題発覚当時、自己弁護の卑劣で陰湿な発言が彼に疑問を感じる人々から頻繁に寄せられていた。
何の事はない、大野氏の行為は平民が官僚を上回る活動をした事に対する嫉妬心と自己業績保全のための形振りかまわぬ『極めて幼稚な』な行為であった。
現に我々の感謝公演の間日に行なわれた政府主催の感謝会には200人余りの招待者だけの御粗末なものであり、最終的には軍関係千名、民間千名の集客力となった我々の感謝演奏会はなんとしても事前に取り潰したかったのであろう。
この行為を国策重視と職員に訓示した暴挙は愚かで嘆かわしい官僚の姿そのものであった。
大野氏は見事に官僚としてその地位を守り通した。時勢を良く判断し「国益重視」との大義名分のもと、沸き起こった領事館への批判を前総領事の行為に巧妙に置き換え、幾つかの事実をも隠蔽し日本のマスコミを逃げ切った。
やっと大野氏がこの地を去る事になった。大野氏の在任中多くの優秀な現地職員が去った。ある職員は『待ってる待ってる、もう少し』と大野氏がデンバーを去るのを待ち受けた。
以下の文章は2014年4月に日本館ホームページに英文掲載のために書きあげ、同年春の大野氏の転任を待って公にすると考えていたが転任が発令されず、私は無関係な総領事館現地職員に混乱を起こす気は無く、今日まで保留していた。業績主義一辺倒で民間人は足下にあると行動する官僚の姿を暴く事に私は躊躇することは無かったが、あくまでも「大野郁彦総領事」の個人的素質の問題であると考えていたからである。
デンバー総領事からの私や日本館に対する官僚丸出しの暴挙は、初代総領事で公金流用事件を起こし有罪となって外務省を去った水谷周時代にもあり、この時は当時の川口外務大臣への直訴で次期総領事の関氏と2名の領事が私を訪問し地元有力者立会いの下で私に謝罪している過去がある。
またしても繰り返された民間人に対する官僚の暴挙。大野氏の差し伸べた握手は受けたがこの人物の行為そのものに対しては全く信用していない。
あの謝罪の仕方には何か悪巧みが隠されている。改めて大野氏の行為を公表する事で「恐らく彼が残したであろう」日本館に関するネガティブな情報に対する正当防衛の記事掲載を決意した。
大野氏は帰国して民間人になるが我々はこの国に残り生活を続けなくてはならない。大野氏の虚偽の業績に目を瞑り定年を祝う気にはなれない。
3年前の2011年3月11日、東日本大震災が起きた。日本の近代史上危機的な大自然災害であり、とくに福島の原子炉破壊は日本消滅の危機でもあった。その危機的状態に最初に駆けつけたのは米軍であった。ミッション名は「オペレーションTOMODACHI」。被災者の方々は心から喜び感謝した事は言うまでも無い。しかし脚光を浴びた「オペレーショントモダチ」の陰でもう一つ日本を守ったミッションがあった。それはコロラド州コロラドスプリングスに本拠地のある北米航空宇宙防衛軍,ノーラッド.[North
American Aerospace Defense Command]である。大災害の混乱に乗じた周辺国によるミサイル攻撃など不測の事態を警戒していたのである。日本の非常事態をいち早く入手した部隊はあらゆる面で素早く行動し、特殊部隊を汚染の危険を侵して急派した。トモダチ作戦とは異なる極秘作戦でもあった。あの時、福島の事故現場に第三国から小さな爆弾が打ち込まれていたら日本は壊滅していたのである。幸いそういった問題に至る前に日本国内の米軍、自衛隊の防衛網が回復しNORADは静かに身を引いたのである。私は実際にこのミッションに携った4部隊の将校達に感謝状を渡している。「そんな事はありえないだろう、幾らなんでも第三国が」とお考えの人も多いだろうがこれが「防衛」である。
多くの日本国民は米国の支援に感謝し「51州目の国」になっても良いとの声までがネット上を走った。被災地の砂浜には大きくサンキューとかかれ、子供までが米国の小旗を振り日本国民は親米と動いた。しかし命の危険を冒してまでNORADとの情報通信任務のため現場に飛び込んだ英雄たちの事を知る人は少なかった。そういった日本国民の感謝親米の流れのなか当時の民主党政権にはアメリカの行動を「政治上のパフォーマンス」と露骨に非難する反米議員もいたのである。
当時日米間では「思いやり予算」と言われる「在日米軍駐留経費負担」の緊迫した交渉が行なわれていた。同じころ米国務省幹部で在沖縄米国領事館総領事などの経歴を持つケヴィン・K・メア氏
(Kevin K. Maher)が国務省内で米国の大学生に行った講義の中で 日米関係を損ねる極めて重大な失言があった事が2011年3月6日に日本の通信社によって発覚、米政府にとっては予算折衝中のスキャンダルであり、反面、民主党政権は勢いついていた。そして3月11日大震災が発生した。数日後には米軍が大部隊を急派し「オペレーショントモダチ」を展開したのである。ミッションに対して素直に感謝を表明できない事情は他にもあった。日本国内で米軍がミッションを展開する場合は日本国政府の事前承諾が必要であり、「オペレーショントモダチ」以前に行動したNORADの情報通信部隊の国内活動は大災害に於ける緊急時とはいえ民主党政権にとって命取りとなる「迷惑な行為」として捉える議員もいた。
震災一年後の2012年3月11日、私は日本の和太鼓集団一行15名を日本の国際交流基金の一部資金援助や在デンバー日本国領事館の後援の元で米国に呼び寄せ、東北大震災に於ける米国民の支援に対しての感謝公演を主催した。国レベルではなく民間レベルで日本人としての感謝を表したかったが、現地に日本公館があるのに民間の団体がその存在を無視してはいかがなものかとの判断から常識の範囲で一声を掛けた。反応は非常に積極的であり国際交流基金などへの資金援助申請書類や手続の仕方などを教えてくれ、記入確認までしてくれた。また「領事館名使用契約」なる契約を求められ広告媒体に「後援 在日本国デンバー総領事館」の明記を許された。私ども日本館独自の予算で運営開催可能な計画であったが余りにも積極的な領事館側の反応に疑問を抱きながらも好意を受け入れた。
デンバー公演はコロラドスプリングのピーターソン空軍基地内で,NORAD部隊の方々や任務に直接携った将兵やご家族1千名余りを招待しての震災ミッション感謝公演を催した。
公演は大成功であったが、公演計画実行任務に当たっていた多くの米軍将校に対して故意に反米行為を行ない日本に対する印象を大きく傷つける結果を招いた一人の日本人官僚がいた。民主党政権下で在デンバー日本国総領事館総領事に任命された大野郁彦氏である。
この公演は総領事館後援契約まで結ばれており、総領事である大野郁彦氏の出席も事前同意を受け、担当した首席領事自らが準備のためピーターソン空軍基地を訪問、総領事車の駐車場や控え室、歓迎会の準備など細かく打ち合わせし了解済みであった。 しかし公演日が近くなるにつれて総領事側より「どの程度の地位の将校が来るか」と頻繁に訊ねるようになった。総領事と言う地位にありながら大野氏は警備上米軍幹部がそんなに早くスケジュールなど公開しない事をご存じなく、「かなり地位の高い人が」の説明では納得しなかったため佐官レベル(コーネル)と伝えると「私より地位が低い、4星のNORAD司令官(ゼネラル)でなくては」と実に尊大な要求を言い出した。NORAD司令官と言えば大統領直属であり戦時における5星手前の平和時における最高位である。日本の外務省本省なら個人オフィスも難しいレベルが総領事である。とても4星ゼネラルとは比べ物にならない地位である。
結局は公演当日の朝、理由一切が告げられる事無く「現れなかった」のである。基地のゲートには「歓迎日本国総領事 大野郁彦氏」の歓迎ネオンが点き、歓迎会場には日本人寿司シェフも待機していたのである。日本震災支援の感謝を表すべき公演であるのに、米軍側は総領事に対して五軍のカラーガード儀丈兵と君が代奏上の用意までしていたのである。会場は立ち見まで千人余りの軍人や家族が集まりNORAD関係者や高官がすでに正装で待機していたのである。驚きを超え怒りの声が担当将校に囁かれた。梯子を外された軍関係者の心境はどれ程のものであったか察して余りあったが速やかに進行を変更し粛々と公演を成功に導いた若い将校達に本当に頭の下がる思いであった。
私は事情説明を大野氏に再三求めたが今日に至るまで一切の説明が無い。何の説明、弁明も無い事を考慮したら意図的に行なった米軍即ち米国民に対しての非礼と判断されても仕方がない。「米軍や米国民に対して感謝の心を持たない反米嫌米日本人総領事」と判断され,それなりの処遇を受けなくてはならない。
破壊され何が起きているかも解らない原子力発電所の現場近くに誰が降下できるであろうか。そういった危険な行為を含め考えられあらゆる防衛ミッションをこなした米軍、さらにはそれを支える米国民を軽視した行動はアメリカ人の顔を泥靴で踏みにじった様なものである。
幾度も事情説明を求めたが「話す必要なない」とメールが届いた。それでも喰いついての回答は「デンバー総領事館の任務は主に邦人保護であり米軍との関係は含まれていない、軍関係は防衛省が担当」と全く的外れのものであった。とんでもない言い訳である。デンバーの街ですれ違う米国人に米軍とかかわりの無い人など存在しないであろう。父が母が兄弟姉妹が親戚が友人がーーと誇りを持って答えるであろう。
米軍関係はデンバー総領事館のあずかり知らぬ事、しからば数日後に開かれたデンバー大学での一般市民1千名を集めての感謝コンサートでも上院下院の選出議員などから多くのメッセージが寄せられたなかで、予定していた挨拶も拒否し、領事館職員用にと入場券を要求していながら観覧に行く事を暗に阻止した行為は何であったのか。それも軍関係だからというのか、とんでもない。一般市民である。官民一体など絵空事、己の功績のみ求め、民間のプロジェクトを平然と切り捨て有能な部下すら遠ざけた。後日職員に話したという「全ては国益の為、それが外交官です」と。何が国益だ、自己の立場しか考えていない独裁者だ。
領事館業務は査証の発行や、自国民の保護援助などの領事サービスだけではなく広報・文化交流活動、情報収集活動などの業務がある。さて広報、文化交流サービス活動は一体誰を相手としているのか?。家族などを含めた軍と何らかの関係ある人を除いたら何が残るのか。米軍関係者いや米国市民に敬意のない総領事館であれば存在の必要はない。米軍基地縮小など反米色の強い民主党政権下から任命された総領事に相応しい対応であった。
(筆者注、この文章は2014年4月に書いたものであり、日本の現安部自民党政権における日米関係はきわめて良好である)
この記述中、オバマ大統領の訪日のニュースがライブで日本語TVから流れている。様々な面での強固な日米関係が確認されている。天皇皇后両陛下との会談ではまず陛下御自ら東日本大震災における米国の支援の感謝を述べられている。
対して大野氏はどうか、日本の国防を全面的に担う米軍そしてそれを支える米国民に、軍関係は私の管轄ではないと明言したばかりか「自分より位が低い」と明言し「感謝」の一言も拒否した。自己業績にならないものは平然と陥れ、自己の栄達につながると考えた事案にはばら撒く。国益業務に私的感情や自己の打算を絡め、「当然」としている日本人官僚の存在は日米関係を損ねる以外何者でもない。
日本人は「礼節を忘れぬ国民」としての誇りがあった。しかしこの官僚は自己保身行為を平然と行ない、事情の知らない人々に様々な繕いをしながら悠然とデンバー生活を満喫している。
米国の皆さん、あなた自身や息子や娘がそして知人が、日本であの日、命を掛けて行動した事など「自己の利害」でしか判断できない人物が総領事として君臨しているのを許す事が出来ますか。私の意見は過激であろうか。
私たち民間の日本人が米国の方々と一体となって様々な分野で相互理解発展を願って行動している中でそういった努力を評価せず、むしろ意図的にしかも平然と梯子を外そうとする行為は先進国の誇りを持つ国の役人がする行為ではない。
日本の安定した平和と繁栄は米国、米軍の影響力なくして存在しない。
感謝の言えない一人の小さな官僚によって日本人全ての印象を損ねてしまう。
それにしても、多くの個人メールを交わし,セキュリティーカメラも意識なく発言したりと外交官としての脇の甘さと民間人に対する高慢な態度には呆れるばかりである。
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