「地域格差を考慮しない一本化した組織ルール」、これによって多くの問題が生じています。とくに通貨価値の違いから優秀な合気道家が昇段も出来ず足踏み状態にある事は世界中の合気道家で考える問題です。また貨幣価値の高い国々に高段者が集中している事実を、そのメリットのない国々の人々はどのように受け止めているのかも考えなくてはなりません。これは単に合気道界のみの課題ではなく日本武道の真意にかかわる事です。特にこれらの国々では上下組織構造が複雑になり末端組織の初段昇段者が500−600米ドル余の支払いを求められている事を見逃すわけにはいきません。この金額が数か月分の収入にあたる国々は実に多いのです。此れに加えて、出張指導礼金、交通滞在費、など「指導者が去った後は借金しか残らない」との嘆きは多いのです。「地域不平等」と考える合気道家が指導者や上部団体に対して複雑な心境に有る事に配慮すべき時でしょう。
また日本で開催される行事に参加するためとして海外在住指導者からの半強制的寄付の要求などに対する疑問、昇段試験を受ける事が可能な条件として高額な講習費の必要な講習会参加を義務付ける事への疑問など、弱者に配慮のない「高慢な合気道」に対する苦情が米国内は勿論、南米、東欧、東南アジアなどの合気道家から直接報告を受けています。合気道にかける情熱は同じでも授かる恩恵に大きな違いがあることへの疑問と不満です。
海外において武道を事業展開する事は大変なことであり「組織維持と金」の問題を無視できませんが、現在の合気道界の一部の日本人指導者には開祖が残したいわば「死人の衣」を身にまとい集金活動のみに熱心な方がおる事は否定できず誠に残念に思います。高額な費用を捻り出しやっと昇段試験に招いた日本人指導者が試験中の殆どを居眠りしていた、など武道家としての品位を揺るがす事までおきています。
また特に米国内に顕著な高額な稽古着や木剣杖、オーダーメイドの袴、バック類やアクセサリーなど、稽古用品の高級ブランド志向化は「合気道の高額化」にさらに拍車をかけています。講習会で指導者の関連団体の商品を持っていなかった参加者に「すぐに買って来い」と大声を上げた指導者もいるのです。過去にはこの指導者もありきたりの稽古着、そして木剣1本担いで渡米したのを忘れたのでしょう。今や米国の合気道家は幼稚園児が大人用のアメリカンフットボールの装備で固めているようなものなのです。世界にはサッカーボール一個を素足で追っている人々が実に多い事を考える余裕がない物質万能主義のあらわれであり、そういった指導者や門下生には真に思いやりのある合気道は存在しません。
高額な講習費や高級稽古用品購入費の一部でも切り詰めて、格差で足踏み状態にある道友たちの為に役にたつ方法を真剣に考える事が将来の合気道の健全な発展につながる事でしょう。「美わしき此の天地の御姿は主の創りし一家なりけり」、この道歌が派手な金メッキだけなのか渋い純金なのか、すべては指導者にかかっています。「高慢で高価な合気道」からもう一度海外普及の原点に帰って考える時期ではないのでしょうか。
尚、日本館のAHAN活動においては本間館長を始め同行スタッフの交通費滞在費などの経費一切は日本館本部が負担し、館長個人への指導謝礼金も全額現地基金に寄付され、講習会収益金は常に全額が現地の活動に使われています。
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