米、震災時に「有事」警戒 福島原発へのミサイル 衛星監視


 【ワシントン 佐々木類】東日本大震災が起きた平成?年3月、衛星で巨大津波を察知した米コロラド州の北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が、大災害の混乱に乗じた周辺国によるミサイル攻撃など不測の事態を警戒していたことが分かった。衛星監視を支援する要員も被災地に派遣され、航空自衛隊松島基地や福島第1原発の被災状況などをNORADに伝えていた。「有事」を震災発生直後から想定した米軍の安全保障上の危機意識がうかがえた。
 米軍関係者によると、NORADは震災発生直後から衛星を通じて、被災地の米軍や自衛隊の基地、放射能漏れ事故を起こした福島第1原発を標的とする周辺国からのミサイル発射の警戒にあたり、米本土から要員も派遣、通信支援や情報収集活動にあたらせた。
 NORADが要員まで派遣して監視を続けたのは、「大災害で警察や自衛隊の警戒網に穴があき、日本本土だけでなく極東の平和と安定に不測の事態が起きかねない」(米軍関係者)という安全保障上の強い危機意識があったからだ。
 実際に当時、NORADでは被災地が夜間にミサイル攻撃を受けた場合、日本政府が発射場所の特定などに手間取る可能性も指摘されていた。NORADが被災地に派遣した要員は、米中西部コロラド州シュリーバー空軍基地に本拠を置く第1、第2、第7宇宙作戦部隊「チーム・8ボール」のほか、同州ピーターソン空軍基地の陸軍宇宙ミサイル防衛司令部と陸軍戦略司令部に所属する計数十人。
 隊員らはトモダチ作戦に参加した在日米軍と異なり極秘の行動を取ったため、所属を示す肩や胸のワッペンをはずして被災地入り。仙台空港などの復旧活動や被災者支援にも従事しながら、現地とNORADとの間の通信網の確立にあたった。
 NORAD幹部は、産経新聞の取材に対し「少数の隊員を派遣し、衛星通信などを通じてトモダチ作戦を支援した」と要員派遣を認めた。ミサイル攻撃への警戒活動については明言を避けたが、米軍関係者は「ミサイル防衛部隊が派遣されたこと自体が、ミサイル発射を強く警戒していたことを物語っている」と話す。



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