館長コラム◆◆  

■心の里帰り、メキシコ クアルタ合気道を訪ねて


マーケットにて

メキシコシティーから2時間程のクアルタ市、人口3万人余り、メキシコ観光スポットからは外れていますが、その分、ローカルな部分がそのまま残された活気のある町です。
中南米の町の中心部が何処もそうであるように、ここも教会と役所が向かい合って建ち、その中央に広場があります。その広場は今日でも人々でごった返し、経済、討論、寛ぎの場となっています。

マーケットには新鮮な品々が、露天には食欲をそそる食べ物が溢れ、それは決して「豪華」や「リッチ」と云うものではないのですが、なにか「ゆとり」の生活を感じるのです。


薬草売り

豆を売るおばあさん


働く子供

クアルタ合気道はそんな町はずれにありました。人々は親切で穏やか、路地でドミノを囲み、子供達が道で遊び、犬が人々に挨拶して回り、物売りが声を掛けて通り過ぎ、馬車をモダンなマイクロバスがノロノロと追い駆け、サイレンを鳴らした燃料ガス販売車が通り過ぎ、トタン屋根だけの屋台に入れば「オッ」と声が出るような食べ物と出会いーー。体から余計な力が抜け去るような気分になれる町でした。


道場入り口、落書きではありません。

道場前にて
左からフラナンド先生、アルベルト先生、
ルベッカ先生、ロシオ先生

この道場は3年前、アルベルト・マサノ先生と奥さんのルベッカ先生と供に開きました。メキシコに留学中のルベッカさんと知り合ったアルベルト先生は彼女の国スイスに。合気道を始めたのはその時でした。
実家のあるクアルタに戻り、家の隣に50畳余りの道場を建てました。道場では現在60人程が稽古をし、また近所の人々の語らいの場、子供の遊び場として「コミュ二ティー道場」の役割もしています。月謝は平均したら一人300円位、その時の生徒の都合によって違うのだそうです。
払えない人も払える人も「お金と合気道は別の事」と、一切の隔たりなく道場を提供しているアルベルト先生に、地方で頑張る指導者の姿を見ました。
道場の庭を大きなゴムの木が覆い、その高い枝からはブランコが下げられ、根元には内弟子のウサギが遊びまわり子供達が戯れる。このシーンを昔、何処かで見たように、私は道場の窓から眺めていました。


稽古風景

道場「道の場」は、いわば道の駅の様なところ、東へ西へ旅する人の安らぎの場。田舎の町道場出身の私にはアルベルト先生の道場での講習会は、私に道場本来の有り方を再認識させる、「里帰りの旅」となりました。

アルベルト先生は合気道指導の傍ら、自治会や教育関係の世話役として先頭に立って活躍されています。

今後とも「コミュ二ティーの道の場」としての役割を実践してくれる事でしょう。私は貴方の合気道指導者としての姿をとても崇高なものとして、敬意をもってこのコラムにまとめました。

滞在中、心からのお世話を下さったアルベルト先生、奥様のルベッカ先生、メキシコシティーから同行してくれたフラナンド先生、奥様のロシオ先生、それに忙しい店の仕事を奥さんに任せてドライブをしてくれたホセさんとウイマーさん。有難うございました。

この訪問に際して、日本館AHAN本部がその費用一切を負担し、講習費一切をクアルタ道場に寄付した事を付け加えます。

       平成16年8月10日
日本館 館長 本間 学 記

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